12/July/2004 S.Benedetg

今回の旅行の目玉の一つ、ピーター・ズントー設計による
サン・ベネディト教会へ行きました。
今までの開けた都市とは一転して、山奥に来てしまった。
氷河特急が通るラインをローカル列車でどこどこ走り、
Sumvitsという駅で降ります。これが小さな無人駅。
荷物を預けることが出来なくて困って、少し周辺を歩いたら、
建物から人の声が・・・。少し恐縮しながら声をかけてみると、
このあたりの山に来た旅行者(夫婦)でした。そして、荷物のことで困っていることを
伝えると、入り口脇に置いていっていいわよと言ってくれました。
鍵はかけていないけど、誰も来ないから大丈夫よ、と。
確かに、こんなに人気のないところにきても収穫はなさそうです。
教会を見に来たというと、ズントーの教会でしょう、とっても有名よ、
と熱っぽく語ってくれました。しかも、このご夫婦、建築のことよく知っている。
私たちが持っていた建築ガイドを真剣に読み出してしまって、
カラトラバの煉瓦で作ったアーチの建造物を見て、
これはすごい美しい、知らなかったなあ、と言い出したり。
まあ、とにかくのんびりしたところで、人ものんびりしています。

荷物を預けることが出来たところで一件落着。
さあ、出かけようと思って標識を見たら、
「S. Benedetg 50min」と書いてある。え、歩いて50分??
バスはないの?と見渡しても、気配なし。
標識の指す方向には、急斜面の山。
でも、ここでめげるわけには行きません。
このためにわざわざスイスに来たのですから。
気持ちを入れ替えて、予期しなかったハイキングに出発。
幸い、天気も悪くなく、おおむね曇り、時折晴れ。
急斜面をスイッチバック式に行ったり来たり。
途中で休んだり、写真を撮ったりしながら歩くこと1時間。
見つけました。小さな教会。

うっかりすると見逃しそうな小ささですが、近づいてみると
その秀作に感動。
とてもシンプルなのですが、すべてに気が配られている。
無駄が一切ない。必要な事だけを丁寧に作り上げているという印象です。
例えば中央の梁(棟)に注意すると上に向かって広がった断面をしているんですね。
これは垂木が 直角に収まるようになっている。
その垂木は先端に向かうほど細くなっている。
そのため、屋根構造のごつい感じが軽減されているのです。
もし中央の太さのままのびていたら、先端でとても思い印象になると思います。
床についても、柱が降りる面から一段上がったところに床があります。
ハイサイドライトといい、総じて言うと上昇感と軽さがあると言えるでしょうか。
最高です。苦労して登った甲斐がありました。

この教会、80年代後半に雪崩で崩れてしまった教会の代わりに
作られたものなんですね。すぐ近くに、その遺構がありました。

これは、教会の向井にあるわき水?
見るからにズントーデザインでしょう。



そして、同じ道を降りて、今度は同じくズントーの温泉へ。
今晩は予定外のハイキングに疲れてしまったので、
温泉は外からのみちらっと見て、就寝。
明日、じっくり楽しみます。

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